拷問から逃れ、人気YouTuberになったシリア難民、Firas Alshater

Firas Alshaterという名のベルリン在住YouTuberが、現在ドイツで大人気です。Firas氏はシリア難民。政治的活動が理由で故郷を追われ、2013年より難民としてベルリンで生活しています。

今年1月、ドイツ人の友人ジャーナリストと一緒に作成してインターネットで配信したこちらの動画が大ヒット、一躍、有名人となりました。

 

 

ベルリン、アレクサンダー広場で”Ich bin syrischer Flüchtling. Ich vertraue dir – vertraust du mir? Umarme mich!” (僕はシリア難民。僕は君を信用するよ。君も僕を信用してくれる?だったらハグして)と書いた紙を横に置き、目隠しをして両腕を広げて立ったFiras氏のアクションを撮影したこの動画は、またたく間にシェアされました。

 

難民がドイツ語で、しかもユーモラスに、難民としてのドイツでの自らの体験を語ったことが大きな反響を呼んだようです。それ以来、Firas氏はZUKARと名付けた動画シリーズを配信しています。ドイツに来てからまだわずか3年ですが、流暢なドイツ語で、トークも大変上手。大変興味深い動画シリーズだと思います。

 

このFiras Alshater氏の著書が10月に出版されました。

 

 

“Ich komme auf Deutschland zu.  Ein Syrer über neue Heimat.” 新たな故郷となったドイツに自ら積極的に近づいて行くよ、社会の一員としてやって行くよという意思を表明したタイトルに惹かれて、思わず買ってしまいました。

 

内容は主にシリアでの迫害体験と、難民としてのドイツでのこれまでの体験、YouTuberとして注目を集めるようになって以来のドイツメディアの反応とそれについて感じること、そしてドイツの難民対応について思うこと、言いたいことなど。

書かれている内容は楽しい内容とは言い難い非常に過酷なものですが、湿っぽさを微塵も感じさせない軽快でユーモアたっぷりの文体で綴られ、考えさせられる点が多いものの、読後感の良い本です。特に、ドイツのメディアにおける難民問題の議論は難民自身の目にはどう映っているのかという話が非常に興味深い。

有名になってから、多くのメディアのインタビューを受けて来たFiras氏は、どのテレビ局も新聞社も雑誌社も皆同じ質問しかしないこと、Firas氏が伝えたいことではなくドイツ人が聞きたがることばかり喋らされることにウンザリしたと語っています。特にムスリム男性の女性の扱いについては毎回質問され、どう答えてもドイツ人の好きなように解釈されてしまうと。

 

ドイツ人の間では難民問題が「難民受け入れ賛成派」と「難民受け入れ反対派」が対立軸となって議論されているが、そのような感情的な対立は何の解決になるのか。社会不安を煽る人は統計などを見た上で語っているのか、それともネガティブなルポルタージュの読み過ぎではないのか、という疑問も綴られています。確かに、当事者達から離れたところでいくら議論しても、答えは見つからないのでしょう。

 

わずか数年前まで自由を奪われ、拷問を受けるという過酷な体験をしていたFiras氏が、短期間でこれだけのドイツ語力を獲得し、ドイツ人と難民の両方(そしてその他の移民も)を笑わせ、和ませ、異文化の壁を薄くする活動をしているのは凄いことだと思います。

難民の人たちは「難民」という塊ではなく、皆、個人としてドイツにいるんですね。私が私という個人としてドイツで生きているように。

 

ドイツの難民受け入れについて、Sci-Tech-Germanyにもいくつか記事を書いています。

難民の受け入れに乗り出すドイツの教育・研究機関

デザインシンキングで難民問題を解決 ワークショップ参加レポート

難民のためのアプリ・プラットフォームリスト